お役立ちコラム
職場実習受け入れのメリットと注意点
せっかく障がい者を採用したのに「面接の時と全然違う…」と感じる人事の方も多いのではないでしょうか。
もちろん一般の採用でも、書類選考や面接だけではわからないことも多く、採用してから「できると思っていたことが全然できないな…」と感じることはあるかもしれません。
障がい者雇用の場合、特性によってはその傾向を強く感じることがあります。そのため、可能であれば採用前に実習することをおすすめします。
そこで、現場実習を行うことのメリットについて考えてみたいと思います。
雇用するときに実習を行なうメリット
雇用する前に実習を行なうメリットは、企業側も実習生もお互いを知ることができるという点です。
短い時間の採用面接だけではわからない、本来その方が持つ特性が見えてくることが多いのです。
障がい者雇用の面接時、支援者が同席するケースが多いですが、その際には、履歴書や生育歴など書面や口頭で話があるでしょう。どんな特性があるのか、配慮してほしい点も説明があるかもしれません。
ただ、面接だけではわからないことがあるのです。
面接ではアピールできなかった点が見える
障がい特性によっては、短い時間の面接や書類だけではわからない部分がたくさんあります。
面接した際の言葉による応対ができるからと言って、必ずしも企業にとってほしい人材とは限りません。
例えば、ある会社で採用したい人材は、細かな部品の検品業務をしっかり行える人でした。
少しでも細かな部品で製品として不適切なところがあれば、それを見分けて仕分ける力が求められていました。
責任者の方は、面接に来る障がい者と何人も面接して、それなりに応対できそうな人を採用していきましたが本人から自分の特性として合っている業務とか、支援機関からの推薦など)、実際に採用してみると検品業務を行うにはなかなか難しい状況だったそうです。
そのため、この企業では現場で実習を行い、採用していくことに決めました。
現場での実習では、企業が求めている検品能力のスキルが一目瞭然でわかります。このように実習を経て採用された人の中には、面接では自己紹介することも難しいようなコミュニケーションが苦手な方も多かったそうですが、実際には現場で活躍しているとのことでした。
実際の業務のレベル感がわかる
いくらシュミレーションしたり、説明を受けたとしても、実際にやってみなければわからないというのが正直なところです。これは、受け入れる企業、採用予定者、送り出す支援機関、どこも同じ気持ちです。ですから、いろいろ考えるよりも実際に業務をやってみることをおすすめします。
ある企業では、初めて障がい者雇用を行なうということで、かなり時間をかけて準備されていましたが、それでも担当者の方は不安がいっぱいという感じでした。
しかし実際に実習生を受け入れてみると、思ったよりも採用予定者の業務理解が高くて安心されたそうです。
この企業では業務の一部として、書類の中で複数箇所をチェックする業務があります。
一度に複数の確認をするとミスが増えるため、チェックする箇所をプロセスの中で組み替えることにしました。
当初、担当者の方はある障がい者の方にとっては業務が難しいのではないかと感じていたようですが、プロセスを組み替えたり、工夫することによって、実習中に問題なく業務をこなすことができるようになりました。
受入先の職場の方も手応えを感じられたようで、安心して、実習生の採用を受け入れることができたようです。
多くの場合、実習を受け入れることにより、雇用へスムーズに移行できる事例をみてきました。しかし、実習でうまくいったからといって、採用後も大丈夫というわけではありません。
実習中に確認しておきたいポイント
企業の担当者としては、実習中にできていたことは、雇用後も当然できるし、それ以上に伸びしろもあるだろう…と考えますが、実際にはそういかないこともあります。
実習中はうまくいっていたのに、なぜ…と思われるかもしれませんが、企業側も実習受け入れに心配があったように、実習生も緊張したり、採否がかかっていると考えると、期限の限られている実習に全力を出し切っているケースがみられます。
採用後に担当者の方が困らないようにチェックしておいていただきたい点をあげてみました。
実習中の働きぶりが継続できそうか
実習期間は数日程度を設定する企業が多く、週末の休みをはさんでも、月曜日に出勤できてくるかを確認するスケジュールにしています。
それでも、実習は終わりの期間が決まっていますので、実習生もあと何日と、頑張る期間が明確になっているため、実習期間中は張り切って業務をこなそうとする傾向が高くなります。
気をつけたいのが、企業側からみると、その働きぶりが基準になってしまうことです。
もしかしたら、実習生にとっては120%のパワーを出している状態かもしれません。実習中に確認していただきたいのが、その働きぶりが実習生にとってどれくらいのパワーなのかです。
もし、120%だったとすると、実習期間中、もしくは3か月くらいは大丈夫かもしれませんが、そのあとも継続していくのは厳しい可能性もあります。
実習中の業務量が、3か月後も・半年後も続けられそうか、実習生本人に聞いてみるとよいかもしれません。
実習中の適度な緊張感を維持していけるか
実習中は、企業の担当者の方も大変ですが、それ以上に実習生は緊張しています。
業務内容についてもそうですし、通勤やお昼休みの過ごし方、職場の社員の方とのあいさつや声のかけ方、報告・連絡・相談などで、頭の中はいっぱいいっぱいです。そんな中で業務をこなしていく姿をみると、まじめに仕事をしてくれると評価していただくことが多くあります。
でも、残念なことに、採用されて毎日の業務になってくると、その緊張感にも慣れがでてしまいます。ですから、慣れてしまう前に、毎日定型的に行う業務でもしっかりマニュアル通りにできているか、毎日本人にチェック表で確認させるとか、
週に1日、担当者の方が時間を指定せずにチェックしにいくなどの、ある程度の緊張感を保つことができる仕組み作りも大切です。
実習を行うことのデメリット
企業側のデメリットは、マンパワーがかかるということです。しかし、障がい者雇用の準備としてはとても良い経験ですし、雇用する前に体制などを整備・見直すのに役に立ちます。
また、社内の方にも障がい者雇用を見てもらう良い機会となるでしょう。
障がい者雇用や実習の受け入れにある程度の経験値ができてくると、特別支援学校や支援機関も、過去に卒業生や訓練生が実習の受け入れや採用してもらった企業へ頼みやすくなるため、採用前提でない実習(体験実習)などの受け入れの依頼を受けることも多くなると思います。
こちらは無理をせず、会社の状況を見極めながら受け入れの検討をするとよいでしょう。